全日本銃剣道連盟

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2020.12.25

ピンチをチャンスに ~番匠会長メッセージ~


1.はじめに

 師走に入り、何かと慌ただしい今日この頃です。銃剣道・短剣道剣友の皆様には、如何お過ごしでしょうか。

 令和2年は、東京オリンピック・パラリンピックの開催も予定され、明るく希望に満ち、平和で豊かな令和の時代の幕開けにふさわしい一年になるものと期待されていました。しかし、年明け早々から全く予期しない新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、銃剣道界も大きな影響を受けることになりました。

 本来であれば、各種の全国大会や社員総会・理事会などの様々な機会を通じて直接多くの剣友の皆様にお会いし、いろいろとお話しできれば良かったのですが、今年はそれもかなわないため、このような文書の形でメッセージをお伝えしたいと思います。

 

2.令和2年を振り返って

 まず、コロナ禍に揺れた令和2年を振り返りたいと思います。

 本連盟は、新型コロナウイルス感染拡大の動きを踏まえて、早い段階から事業への影響を分析しながら先行的に対応するよう努めてまいりました。緊急事態宣言など政府の方針等を踏まえつつ、4月には「新型コロナウイルス感染防止のお願い」を、6月には「緊急事態宣言解除後における新型コロナウイルス感染防止のお願い」と「稽古及び大会等の再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」などを発出し、稽古要領の工夫や感染防止対策などについて必要な準拠や最新の情報をお伝えしてきました。

 また、本連盟が主催する全国大会に関しては、2月に「全日本短剣道大会」を感染防止に細心の注意を図りながら実施したものの、それ以降は4月の「全日本銃剣道優勝大会」、7月の「全国高校生銃剣道大会」と「全日本少年少女銃剣道・短剣道錬成大会」、8月の「全日本青年銃剣道大会」と「高松宮記念杯争奪全日本銃剣道選手権大会」と、令和2年に予定していた全国大会を全て中止せざるを得ない事態となりました。10月に予定されていた鹿児島国体も令和5年に延期となったため、国体での銃剣道競技会も実施できませんでした。

 さらに、定時社員総会、通常理事会をはじめ、各種の会議や講習会・研修会なども中止や書面形式に移行するなど、これまでに例のない大きな変更を余儀なくされることになりました。

 平素から全国各地で銃剣道・短剣道の稽古に熱心に励み、全国大会を目標に頑張ってきた選手・指導者・保護者はじめ関係者の皆様には、大会の中止によって大変悔しく残念な思いをされたと思いますし、その気持ちは私たちも全く同じです。そして、銃剣道・短剣道の振興・発展と各種大会の準備等にあたってこられた関係各位には、これらの事情への深いご理解とご協力の上、柔軟かつ先行的にご対応いただいたことに改めて感謝申し上げます。

 また、会員・剣友の中で新型コロナウイルスと闘うため、日夜最前線で献身的に素晴らしい活躍を続けておられる医療関係の皆様、防衛省・自衛隊の皆様には、連盟を代表して深く敬意と感謝の意を表します。

 

3 令和3年に向けての展望・・・ウィズコロナ時代の銃剣道

 それでは、このようなコロナ禍の影響に直面しながら、私たちは令和3年に向けてどのような展望を持ち、如何に取り組んでいけば良いのでしょうか。現在、私たちは新型コロナウイルスとの闘いの渦中にありますが、ワクチン開発や治療薬の開発も急ピッチで進められており、人類は必ずこの未知のウイルスに打ち勝つことができると信じます。しかしながら、それまでは手をこまねいて何もできないのでしょうか。いえ、そんなことはありません。私たちは、銃剣道の発展をコロナ禍によって停滞させてはなりません。

 そもそも、銃剣道の修行は「たゆまない努力によって心身を鍛練陶冶し、規律を守り、礼節を尊び、信義を重んずる等、社会人として必要な道徳性を高め、もって正しく、明るく、強く、逞しい、人間形成を目指して精進すること」を指標としており、いつ、如何なる環境であろうとも、銃剣道を愛し、修行を志す剣士として人間形成のためにできることは少なくありません。

 その第1は、感染防止に努めながら、今できることに全力を尽くすことだと思います。コロナ禍は一瞬にして私たちの日常を激変させ、銃剣道の実施に際しても、当たり前と思っていたことに大きな制約を与えることになりました。気迫に満ちた真剣勝負が成立しない銃剣道など想像もできませんが、感染拡大に伴って、一時、対面稽古の自粛を要請しなければならないことになりました。もちろん、現在では地域の特性に応じ、フェイスガードの装着などの様々な手段を講じることによって、次第に本来の稽古が出来るようになりましたが、「三密」の回避や道場の換気、消毒の励行など、基本的な感染防止策を徹底することは、むしろ「ニューノーマル」と認識しなければなりません。

 そして、私たちはこれを制約や困難と考えるのではなく、今できることは何か、今しかできないことは何かと、前向きに捉えることが大切と考えます。道場でなくても稽古はできます。基礎体力を向上し、瞬発力を高め、体幹を鍛え、素振りや足さばきを極め、形をより美しく洗練し、イメージトレーニングで対面稽古を創造するなど、今までなかなか深めることのできなかった部分を鍛えなおす好機と考えることはできないでしょうか。新型コロナウイルスに勝つことは、自分に勝つことでもあります。コロナ禍の今だからこそ、知恵と工夫で修養の質を高めて欲しいと思います。

 その第2は、コロナ禍にあっても銃剣道・短剣道発展の努力を続けていくことです。コロナ禍の影響によって、これまで当然のように行われて来た様々な活動に制約を受け、会員増勢の努力や事業内容にも影響が出ることは懸念事項ではありますが、私たちは決して発展の勢いを低下させてはなりません。特に、近年、銃剣道・短剣道は様々な分野でその活動の幅を広げ、ジュニア層、女性、シニア層、国際化など、従来の会員層からの拡大もどんどん進めていかなければならないと考えています。

 ジュニア層へは、中学校の武道必修化を契機に着々と成果が上がっており、コロナ禍の令和2年度は昨年の5校から10校に迫る勢いで銃剣道の授業が行われるようになっています。シンプルで、男女が一緒に履修でき、非常に安全な上、木銃・竹刀以外には特別な道具や服装も必要ではない銃剣道・短剣道の授業が、今後さらに全国の学校で広まっていくことを強く期待しています。そして、より多くの少年少女たちが、銃剣道・短剣道の素晴らしさに出合い、大きく育ってくれることを期待しています。

 近年、銃剣道の修養に励む女性の数が増加傾向にあることは喜ばしいことです。元々銃剣道は男性主体のイメージが強く女性の競技人口は限られていましたが、連盟の役員にも女性理事の割合が増し、指導者、審判員にも多くの女性が参加するようになってきました。各種の全国大会でも個人戦のみならず団体戦も実施され、今後はさらに一層女性への普及と競技人口の拡大が期待されています。令和3年度は、その大きなステップにしたいと思っています。

 国際的な普及の推進も重要です。そもそも銃剣術が西欧でも発達し、戦前からアジア諸国にも広く知られた競技でしたが、近年武道の国際化の進展に伴い、再び日本の銃剣道に関心が向けられるようになっています。令和2年度は「第3回国際銃剣道・短剣道セミナー」をポーランドで開催することにしておりましたが、欧州でのコロナ感染拡大の影響から中止せざるを得ませんでした。しかし、今後も引き続き連盟として国際セミナーの開催を追求するとともに、世界各地で将来の指導者を目指す剣士に銃剣道・短剣道の技や心構えを広げるなど、今後とも銃剣道の魅力を世界に広げ国際的な普及に取り組んでまいります。

 コロナ禍による「三密」の回避や「ソーシャル・ディスタンス」、外出の自粛などによって、心身の健康への悪影響も社会問題となっていますが、実は銃剣道・短剣道こそ、特にシニア層の健康管理と体力向上に有益ではないかと考えています。姿勢を正し、全身を使って自分のペースで稽古ができることは、まさにウィズコロナ時代のシニア層の健康法としても有益ではないかと思います。政府も「生涯スポーツ・体力つくり」を推奨し、スポーツを通じた健康増進と健康長寿社会の実現を目指しているところであり、連盟としても銃剣道・短剣道をシニア層への普及を一層進めたいと思います。

 

4 まとめとして・・・「変化に適応したものだけが生き残る。」

 進化論で有名なダーウィンは「生き残るのは、最も強いものでも、最も知的なものでもない。変化に最も良く適応したものだけが生き残る」という言葉を残しています。コロナ禍というピンチは、これまでの因習やしがらみを排し、変化を恐れず大胆な発想と行動をすることによって、新しい強みを発揮できる絶好の機会になりうるのではないかと考えます。まさに銃剣道にとって、変化に対応することによって進化するチャンスではないでしょうか。

 銃剣道は日本古来の武士道の伝統と美風を継承する素晴らしい武道であり、私たちはこれを先人たちから受け継ぎ、将来にしっかりと引き継いで発展させていかなければなりません。同時に、時代の特性や要請に柔軟かつ的確に向き合いながら、新しい環境や様々な挑戦にも積極・果敢に取り組み、銃剣道の素晴らしさを、世代・性別・場所を超えて広げていく努力も強く求められているように思います。

 新しい令和3年が、新型コロナウイルスを克服して、皆様にとりまして健康で素晴らしい一年になりますよう祈念申し上げ、また、銃剣道にとりましても大きく発展する年にすべく皆様のご協力をいただきながら連盟をあげて努力することを決意して、メッセージとさせていただきます。どうぞ、良いお年をお迎えください。

  令和2年12月吉日

公益社団法人 全日本銃剣道連盟

 会 長  番匠 幸一郎